フリージアの基礎知識

 

フリージアの原種の多くは南アフリカに自生しており、世界でアフリカ大陸のみにしか存在しない小さいグループです。原種は16種あるといわれており、小さく可憐な花を咲かせ、まわりに甘い香りを漂わせるものや、地味な色合いで香りの全く無いものがあり、ひっそりと岩陰に、または乾燥した地に大して目立たず長い年月生き延びています。フリージアは多くの球根と同様に、種子繁殖と栄養繁殖により過酷な環境で子孫を残し生き延びており、その多くは南アフリカでも冬湿潤型の地域に自生しています。

フリージアは、悪条件下で種が実らなかった場合、子孫を残すために開花後
球根に養分を送り子球(木子ともいう)をつけます。親球(成球)は子球を肥大させ、数個の子球は、葉が枯れるころに親球から離れ(分離)ます。しかし、発芽に適した時期が来るまで休眠するため、すぐには発芽しません。夏の乾燥する時期を数ヶ月間休み、夏の終わりごろになると眠りから覚めます。眠りから覚めた球根は、秋になり少し涼しくなると、球根に蓄えた養分を使って発芽成長します。

もし、開花後に天候に恵まれた場合は、自花受精により種を実らせます。種が弾けて地面に落ち、時期が来ると、その種が発芽し球根を太らせますが、地上部近くでは水分が足りなかったりなど条件が悪いためか、地下に小さい大根のような根(牽引根という名がついています)をしっかり伸ばし、その根を縮ませて球根を下方に引き込み、居心地の良い場所へ移動させます。フリージアのそれぞれの原種は、近くに異品種が無いため、その地で幾世代も交雑することなく純潔を守り続けます。このようにして、今でも南アフリカで長い年月生き延びているのです。

日本での古い和名は、アサギズイセンと呼ばれていたそうです(葉っぱが水仙に似ているように見えたのでしょうか)。別名を香雪蘭といわれているのも香りの良さから名づけられたのでしょうか。昔の人は、ダリアも天竺(てんじく)ボタンと呼んでいたように思います。

オランダで改良が進んだフリージアの花は、まるでオランダ人を見る思いがします。温室でつくるフリージアは、背丈(草丈)が1メートル以上にもなり、南アフリカの原野に咲く小さくて可愛い花から改良されたとは想像もできないほどのボリュームです。

オランダでのフリージアの切り花単価は、重いほど高値が出るとのこと。品種改良もボリュームのある方に向かっているのも、なるほどとうなずけるところです。中輪、大輪、巨大輪の花、黄色、白色を筆頭にピンク、紫、赤、オレンジ、そして珍しい茶色まで一重、八重。オランダには150以上の品種がありますが、次から次に新品種が生まれて消えていきます。フリージアの品種は、新品種が生まれてから7年くらいで世の中に出回り(日本では新品種をあまり目にすることはありませんが・・・・・)、およそ7年くらいで消えていくといわれています。その理由は、フリージアが非常にウイルス病に弱いためです。また、ピンクや紫、赤色のフリージアを、花屋さんであまり見かけないのは、この色合いのものが特に病気に弱く切り花生産が難しいためです。